今日から使える和訳の極意 - Tip 24: 「の」の使い過ぎを抑える 4 つの戦略
英文を何となく訳していると、やたらと「の」を使ってしまいがちです。
たとえば、
We conducted a study on the effect of a sudden increase in temperature of the irradiated fuel.
という一文が、
私たちは、照射剤燃料の突然の温度の上昇の影響についての研究を行った。
になってしまうような場合です。
これは極端な例ですが、和訳の中でやたらと「の」が多用されてしまう理由ははっきりしていて、それは、英語の前置詞に対して「の」を当てるのがとりあえずラクで無難だからです。
「の」という助詞は、色んな概念を表せる万能語で、実に便利です。ざっと思い浮かぶだけでも、
- 私の車 - 所有
- 昆虫の研究 - 対象
- 変化の影響 - 原因
- 日本の失業率 - 場所
- 桜の有名な町 - 主語
- 衣服の汚れ - 付着
などの用法を挙げることができます。
こんな具合ですので、原文が in でも of でも for でも with でも、とりあえず、「の」と訳しておけば、「所有」とか「対象」とかいった面倒なことを考えなくてもとりあえずその場を凌げる。だから増えてしまう。そういう悪循環が生まれてしまいます。
英文は、洗練度が上がるにつれて「前置詞+名詞」という組み合わせが増える、つまり前置詞が増えるわけですが、それに合わせて「の」の使用頻度が増えてしまうと、訳文の質は英文に反比例して下がってしまいます。これはいただけません。
このような問題に遭遇した場合には、次の 4 つの戦略が有効です。これらを組み合わせれば、「の」の連続は概ね解消できます。
【戦略 1】 英文の前置詞に対して動詞を当てる
例: シャツの汚れ -> シャツに付着した汚れ
【戦略 2】 動詞化できる名詞は動詞化する
例: 温度の変化 -> 温度が変化する
【戦略 3】 「の」を省いてひとまとめにする
例: 温度の変化 -> 温度変化
【戦略 4】 「の」を別の表現に変える
例: 日本の失業率 -> 日本における失業率、突然の変化 -> 急激な変化、急変化
これらの戦略を駆使して冒頭の一文を最適化すれば、次のようになるでしょう。
【改善例 1】
私たちは、照射剤燃料の突発的な温度上昇がもたらす影響について研究した。
【改善例 2】
私たちは、照射剤燃料の温度が急上昇した場合にどのような影響が生じるかを研究した。
最初の訳例に 5 個あった「の」が 1 個に減りました。誰が見ても読みやすい和文になったと思います。
【戦略 1】は、原文の内容がよく理解できていないと適切な動詞を案出できないので、文書の内容によっては勇気のいる選択肢ですが、【戦略 1】が巧みに使えると、「自分は文書の内容をよく理解できていますよ」というアピールになります。
逆に英訳の場合には、日本語で動詞を使って表現されている箇所を敢えて前置詞で訳すことができます。高度なスキルですが、使いこなせれば、動詞をその都度使うよりも洗練された英文に仕上がることでしょう。
トラックバック
トラックバックpingアドレス http://aoc-translation.lomo.jp/modules/d3blog3/tb.php/27
参照元
- cheap air jordan2015-10-26 10:37
- embchamber.org/D3HHBGLAcH4cheap air jor......more