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Gypsy 〜 Inishmore (Forsaken Heart) 〜 Danny Boy / Riot

カテゴリ : 
音楽
執筆 : 
ellersley 2013-7-8 6:20

 


They say she's gone, gone forever.
Far away from the emerald shores.
I always thought, she'd leave me never.
Forsaken heart of Inishmore.
In the hills of galway, I'll wait forever more.

 

人は云う 
彼女は遥か彼方に行ってしまったと
もう永遠に
このエメラルドの岸に戻っては来ないのだと 
僕は信じていた
彼女がずっとイニッシュモアにいてくれると
置き去りにされたこの想い...
でも僕は待ち続ける
ゴルウェイの丘で

翻訳: 中村泰洋


 
初めて聴いた方、いかがでしょうか。美しい曲でしょう。
 
タイトルの Inishmore というのは、アイルランド西部に浮かぶ島の名前です。Riot は米国のバンドですが、曲のモチーフになっているのは、19世紀にアイルランドを襲った大飢饉です。イニッシュモア島を含めたアイルランド西部は特にそのダメージが大きく、多くの民が飢饉から逃れるために祖国を後にしたと言われています。主人公の少年が想いを寄せていた少女も例外ではなく、この曲では、2 度と戻らぬ彼女を待ち続ける少年の想いが謡われています。
 
Riot はマーク・リアリ (G) を中心に、1970 年代から活動している長寿バンドです。ただ、リアリは 2012 年 1 月に亡くなっていますので、「活動していた」と言った方が良いかもしれません。バンド自体は存続しているようですが、リアリのいない Riot など、イニエスタのいないスペイン代表と同じで、リアリは替えの利かない存在だからです。そういう意味で、98 年に川崎クラブチッタで行われた日本公演のサウンドチェックの様子を収録したこの動画は貴重でしょう。映像もサウンドも驚くほどクリアで、真剣な表情の中にも、本番とは違うリラックスした雰囲気が伝わってきます。ちなみに、RIOT にはギタリストが 2 人いますが、向かって左側、メガネをかけた細身の人がマーク・リアリです。
 
リアリは米国人ですが、前世が日本人だったのではないかと思えるほど、彼の紡ぎ出すメロディは、日本人の感性をビリビリと刺激する独特の哀愁と叙情感に満ちています。その特殊な音楽性ゆえ、本国アメリカではセールスに恵まれておらず、おそらく日本における知名度の方が高いのではないでしょうか。実際、キャリアの初期から日本との結び付きが強く、「NARITA」や「Tokyo Rose」といった曲も過去に発表しています。
 
マーク・リアリがいれば Riot というバンドは成り立つのですが、Riot は実にメンバーチェンジが多いバンドで、リアリ以外のメンバーは極めて流動的です。97 年に発表されたこのアルバムでは、マイク・ディメオという人物がヴォーカルを務めていますが、彼は Riot の歴史において 4 人目のヴォーカリストです。過去のヴォーカルと比べて長く在籍したディメオですが、Wikipedia によると彼も 2005 年に脱退しており、その後は前任のトニー・ムーアを迎えているようです。
 
私は RIOT を過去に一度だけ生で見たことがあります。1996 年だったか 97 年だったか記憶が定かでないのですが、Inishmore がリリースされる前だったと思います。会場が今池のボトムラインだったのは間違いありません。ボトムラインは観客席のない典型的なライブハウスで、結構寒い時期だったのに、すし詰めの会場が生み出す熱気で汗だくになりながら、彼らの素晴らしい楽曲を堪能しました。ショウの終わりに、ヴォーカルのマイク・ディメオに「素晴らしいショウだったよ。ありがとう」と叫ぶと、彼は非常に喜んで、私とガッチリと握手を交わしてくれたことを今でもよく覚えています。
 
さて、Inishmore に戻りましょう。絶望と覚悟が交錯したような複雑なリズムに乗せてケルト色溢れる美しくも激しいメロディがひとしきり奏でられた後、突如として心休まる穏やかな楽曲に切り替わります。ほとんどの人がどこかでこの曲を耳にしたことがあるでしょう。これはアイルランドの民謡で「Danny Boy」という曲です。小学生の頃に下校時のテーマソング (?) として使われていたことを思い出す人も多いでしょう。そのせいでしょうか。日本人である私たちでさえ、なぜか懐かしさを覚えます。コブシの効いた Riot 独特の演歌調アレンジも含め、ハードロックやヘヴィーメタルを聴いたことのない人でも素直に受け入れられる 1 曲かと思います。
 
以前にこのブログで Pretty Maids の「Please Don't Leave Me」を紹介した時、アイルランドを旅したときのことに触れました。私がアイルランドにいつか行ってみたいと思うきっかけになったのが「Please Don't Leave Me」だったのは間違いないのですが、Riot が 1997 年発表したこのアルバム (といいますかこの曲) を聴いて、私はその思いを一層強くし、2006 年にようやく訪れることができました。
 
初めて訪れたアイルランドは、都心から少し離れると、なだらかな緑の丘が幾重にも連なっており、穏やかな空気に包まれていました。夕暮れ時に車窓から望む丘陵地はまさに Danny Boy の世界で、悠久の時間がゆったりと流れているイメージどおりの景色でした。
 
「いつになるかわからないが、今度は家族 4 人でイニッシュモア島に行こう。」
 
この曲を聴いていたら、そんな希望が沸々と沸き上がってくるのでした。 
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