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2つの翻訳スタイル

カテゴリ : 
翻訳
執筆 : 
ellersley 2012-7-18 11:38

翻訳時には、次の2つの進め方があります。



  1. 一文一文をその都度完璧に仕上げ、見直しはほとんどしない

  2. まずはとにかく最後まで訳し切り、見直しをしながら仕上げていく


どちらのスタイルをとるかは、翻訳者によって異なるようです。「スティーブ・ジョブズI・II」などの翻訳で有名な井口耕二さんは1のスタイルに近いようですが、私は2のスタイルで、和訳の場合にはその傾向が特に顕著です。


2のスタイルを好む理由は、ざっと羅列すると次のようになります。



  • 粗くても、とりあえず早めに最後まで訳してしまった方が気がラク

  • 時間を置いて訳文を改めて見てみると、アラが見つかりやすい

  • 時間を置いて訳文を改めて見てみると、最初はわからなかった部分がなぜか理解できる


私は以前に、即時性の高いニュース翻訳のプロジェクトに参加していたことがあり、そこでは、数百ワードの原稿を受け取った後、1時間後とか1時間半後に送り返す必要がありました。その際もやはり私はできるだけ2のスタイルを心がけていたのですが、翌日そのニュースサイトを見ると、自分でも驚くほど稚拙な訳文が掲載されていて思わず赤面することがありました。訳し終えた後、確かに確認したはずなのですが、訳してから時間が経っていないと、なぜかアラに気付かないのです。


そのような自身の経験を踏まえ、受講生には2のスタイルを勧めると同時に、訳文を一晩寝かせるように勧めています。寝るという行為が非常に重要で、翌日改めて訳文を見てみると、非常に客観的に見ることができ、粗訳の段階ではわからなかったことが、なぜか明快に理解できたりするのです。どうやら寝ている間に、様々な情報が頭の中で整理されているようです。


粗訳と見直しの時間配分も人それぞれであり、原文の難易度や、原文の内容に対する造詣の深さなどによっても異なりますが、私の場合は3:1くらいが理想的です。例えば5日間で完結すべき案件であれば、4日目の昼までに粗訳を終え、午後から見直し・仕上げに入ります。4日目いっぱいまで粗訳に費やし、最後の1日で見直し・仕上げを行うと、少し品質が下がります。


自分が本当に得意な内容の案件であれば、1に近いスタイルで納品できますが、そのような案件が来るのは、残念ながら年に数回しかありません。


体裁の不備や誤変換といった単純なミスを避けるためにも、受講生には2のスタイルをお勧めします。木曜日の夜中に提出された答案には、やはり単純な疎漏が多いという傾向が見られます。


2のスタイルを実践する際のコツは、粗訳の段階で時間をかけ過ぎないことです。わからないところは、適当に訳しておくか、英語のままにしておくかして、どんどん先に進みましょう。その部分をハイライトしておけば、見直しの際に非常に役立ちます。粗訳が終わった時点ではハイライトだらけという状況になることもありますが、一晩寝て、翌日見直しに入るときには、一度読んで訳しているため、文脈や背景情報がある程度頭に入っています。ですから、粗訳時よりも大局的な視点から疑問点を再考することができ、五里霧中の状態で調べる粗訳時よりも効率よく調べられるはずです。

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