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MIDNIGHT FLIGHT - ひとりぼっちのクリスマス・イブ / 浜田省吾

カテゴリ : 
音楽
執筆 : 
ellersley 2011-11-26 5:50

 

あの娘乗せた翼 夜空へ消えてく
空港の駐車場 もう人影もない
“行くな”と 引き止めれば 今頃二人
高速を都心へと 走っていたはず
She has flown away into the night sky
leaving me all alone in the empty airport parking
If I had not let her go
we would be driving on the highway
heading for the downtown 
 

失くしたものが あまりに大きすぎて
痛みを 感じることさえも 出来ないままさ
ひとりぼっちの クリスマス・イブ
凍えそうな サイレント・ナイト
ここからどこへ行こう
もう何も見えない空の下
 

I have lost so much I can't even feel the pain
A lonely Christmas Eve
A freezing silent night
How could I find where to go
under this dark sky showing nothing to me?
 
妹と暮すつもり しばらくニューヨークで
ひとりきり 東京で もう生きてゆけない
逢いたい時にだけ 電話かけてきて
食事して ドライブして ベッドに入るだけ
 
I’m gonna live with my sister in New York
for some time
I can't stand any more this lonely Tokyo life
You would ring me only when you want to see me
just having dinner, going for a drive, and
going to bed
 
形の無い愛だけを 信じてきたあなたは
本気で愛すること 怖れてるだけ
ひとりぼっちの クリスマス・イブ
凍えそうな サイレント・ナイト
二人で生きてきた 都会(まち)の灯りが
遠ざかる
 
Only believing in love without a definite shape, 
you are actually afraid of seriously loving someone
A lonely Christmas Eve
A freezing silent night
The lights of the city where we spent time together 
are growing fainter
 
降り出した みぞれまじりの
雨が 雪に変ってゆく
誰も皆 愛する人の
待つ場所へと 帰ってゆく
 
The sleety rain that has started to fall
is turning into snow
Everyone is going back to the place
where their beloved one is waiting
 
ポケットの中 あの娘に贈ろうとした
Golden Ring
今でも 手のひらに 握りしめたまま
ひとりぼっちの クリスマス・イブ
凍えそうな サイレント・ナイト
もう守るものなんて見つけられない
何ひとつ
 

In my pocket is a golden ring
that I tried to give her
I'm still holding it tight in my hand ...
A lonely Christmas Eve
A freezing silent night
How could I find something to stick to now?
Never... 

  翻訳: 中村泰洋

 


最近は11月の半ばを過ぎると、街は一気にクリスマスムードへと衣替えします。名古屋の地下街にもクリスマス仕様の装飾が施され、明るいクリスマスソングが流れるわけですが、今回はそんな雰囲気とは対照的なクリスマスソングをピックアップしてみました。浜田省吾が1985年にリリースした「MIDNIGHT FLIGHT - ひとりぼっちのクリスマス・イブ」です。
 
ただし、私は浜田省吾ついて、いくつかの代表曲を除いてほとんど何も知らず、語るべき内容を持っていません。何しろ浜田省吾の存在を知ったのが、1992年に放送されたTVドラマ「愛という名のもとに」という有り様ですので、浜田省吾の詳しい情報については【ウィキペディア】に譲りましょう。ちなみにこのドラマでは、浜田省吾が初期に発表した「悲しみは雪のように」という曲がリメイクされて主題歌としてタイアップされ、何と170万枚という大ヒットを記録しました。私と同世代の人、特に女性ならほぼ100%、この曲の一番を、歌詞を見ないで歌えるはずです。


「MIDNIGHT FLIGHT」にはもう1つ、ピアノをフィーチャーした別バージョンがあるのですが、そちらは少々アレンジがロマンチックすぎてイマイチです。このオリジナルバージョンの方が、シャイで不器用で意気地なしという悲しい男の性をいっそう強く伝えるような気がします。ソロパートのサックスが聞こえてきた瞬間に、こんなドラマチックな体験とは無縁の人生を送ってきたはずなのに、つきあっていた彼女がアメリカにいる妹の元にしばらく身を寄せて人生を見つめ直すというあり得ないシチュエーションへの違和感もどこかに行ってしまい、なぜか不思議な既視感が込み上げてくるのは、きっと私だけではないでしょう。
 
マライア・キャリーの「ALL I WANT FOR CHRISTMAS IS YOU」をはじめ、街に流れるクリスマスソングは、明るい曲やロマンチックな曲ばかりですが、クリスマスに特に思い入れのない私にとっては全然しっくり来なくて、「またかよ」という気持ちしか芽生えません。それよりもむしろ、歌詞全体が、「後悔」と「反省」と「絶望」と「虚脱」で塗り固められた「MIDNIGHT FLIGHT」の方がずっと沁みます。この曲を街で聴いても、消費意欲が減退するだけなのですが、このどうしようもない後ろ向きさ加減が実はハマってしまうという人は、結構多いでしょう。


歌詞に注目してみましょう。


“行くな”と 引き止めれば 今頃二人 高速を都心へと 走っていたはず


仮定法です。私は翻訳者になって10年以上経ちますが、初めて仮定法を使いました。実務系の翻訳者が仮定法を使う局面はまずないからです。仮定法というのはこういうときに使うのだという新たな発見です。愛なんてもともと形のないものなので、


形のない愛だけを信じてきたあなたは 本気で愛することを恐れているだけ


というメッセージは何やら不可解ですが、「形のない愛」とは何か、とか、「形のない愛だけを信じていると、どうして 本気で愛することを恐れることになるのか」といった面倒な質問をファンにぶつけてはいけません。「形而上学的なフレーズというのは、何となく意味深でカッコいいよね」で良いのです。余計な解釈を加えないのが、翻訳者のあるべき姿です。


 先述のとおり、私にとってクリスマスが特別だったことは、少なくとも大人になってからは一度もなく、普段と同じように仕事をしていた記憶しかありませんが、独身の頃も仕事帰りに小さなケーキを買って家で食べるというのが、ささやかなクリスマスの習慣でした。ヤマト運輸で働いていた20代前半の頃、クリスマスイブの夜に配達後の伝票を整理しながら先輩社員と交わした何気ない会話が、今でも何となく印象に残っています。
 
先輩:「もうこの年だと、別にクリスマスって言っても何でもないなあ」
私:「そうっすね。私も一緒ですよ」
先輩:「中村くんは若いから、そんなことないだろう」
私:「いやあ、別に普通ですね。だって今日もこうやって出勤してるじゃないですか。明日も出ますよ」
先輩:「そっか。でもオレもそんな感じだったかなあ」
 
マスコミはいろいろと煽り立てますが、ひとり暮らし男性のクリスマスというのは、だいたいこんなもんじゃないかと思います。
 
24日も25日も普通に働き、夜遅く家に帰って、「そういえば今日はクリスマスだったな」と思いながら、ひとり静かに聴く。この曲は、そんなシチュエーションにぴったりです。

 2016年12月に加筆・修正。

  

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