ニュース + ブログ - 石黒部長の粋な計らい

石黒部長の粋な計らい

カテゴリ : 
思い出
執筆 : 
ellersley 2011-7-1 15:20

7月はお中元の季節です。私自身はお中元とは縁のない生活を送っていますが、この時期になると、十数年前のことを思い出します。


当時20代の前半だった私は、1年ほどですが、クロネコヤマトの運転手をしていました。重い荷物を時にはアパートの5階まで階段で運んだりして、なかなか大変な仕事なのですが、お中元とお歳暮の時期にあたる7月と12月は特に厳しい時期です。荷物の量が普段の1.5倍くらいになる上、普段は荷物のない家に配達するので、場所が分からなかったり、分かっていてもうっかり通り過ぎてしまったり。また、お中元やお歳暮がたくさん届く家は豪邸が多くて、こちらは急いでいるのに、呼び鈴を鳴らしてから、中のご婦人が玄関先まで出てくる時間が長いこと長いこと。何しろ玄関の扉から門までの通路が40メートルもあったりするのです。あまりにも遅いので門扉を開けて中に入ったら、犬が飛び掛かってきて手を噛まれたなんてこともありました。


肉体的にはハードな仕事でしたが、今思い返してみると、良い思い出に包まれています。基本的には担当区域を1人で回るので、命令や指図を受けることがなく、配達ルートも自分次第。今と違って時間帯お届けなんていう面倒なサービスもなかったので、荷物が少ない日は、途中で少し休憩することもできました。性格的には仕事に合っていたように思います。また、仕事を教えてくれた成田さんを始め、先輩社員はほぼ例外なく親切で気さくした。


また、営業所内で唯一英語を話せる社員だった私は、外国人のお客さんが質問をしてきたときに対応を求められることがあり、受付のスタッフから感謝されることもありました。


そんな中、今でも強烈に記憶している出来事があります。


あるとき、夜遅くにどうしても届けないといけない荷物があり、部長(肩書はあまり覚えていません。副所長や主任だったかもしれません)と一緒に届けに行ったことがありました。主幹ベースでの誤仕分けによって営業所への到着が遅れた荷物だったと思います。ヤマトは翌日配達を謳っているので、営業所に届いた荷物は、その日のうちに配達にいかないといけないのです。


自分の担当区域だったので、場所を知っていた自分が部長を乗せて行きました。夜の11時ごろだったと思います。部長が荷物を相手に手渡しながら何度も頭を下げているのが、車の中から見えました。「こんな時間に持ってくるんじゃないよ」と怒られていたのは明らかでした。


帰り道、私が運転するトラックをコンビニで停めさせた部長は、足早に店内に入っていくと、缶ビールを2本買ってきて、「お疲れさん」と言いながら私に1本くれました。


当時の部長は、今の私と同じくらいの年齢だったと思います。今もし自分が逆の立場だったとして、あの状況で果たして部長と同じ行動をとれただろうかと考えると、正直なところ自信がありません。「おまえの担当区域だから、行ってきて」と一言言い放つだけという気もします。


組織内で上に立つ者としてはごく当たり前の姿勢であって、それほど特筆すべき行為ではないのかもしれません。ヤマトは大企業なので、もしかしたら、あのような状況で契約社員に持って行かせないという決まりになっていたのかもしれません。


それでも、部長が見せたその行動に、私は、組織で働くことが必然的に伴う理不尽と、そんな理不尽な役回りを、ぼやくこともなく粛々と受け入れる企業人としての矜持を見出しました。そして、部長のその粋な計らいに、大人としての懐の深さといいますか、年長者としてのある種のプライドのようなものを感じたのでした。


私は今、フリーランス翻訳者として自宅で1人で仕事をしているので、このような状況とはほぼ無縁ですが、もし将来、例えば法人化したりして従業員を雇ったりするようなことがあれば、そんな粋な計らいを是非とも後輩にしてあげたいなと思います。


当時、ヤマト運輸名古屋天白営業所に勤めていらした石黒さんのお話です。

トラックバック

トラックバックpingアドレス http://aoc-translation.lomo.jp/modules/d3blog/tb.php/37

コメント


投稿者 スレッド
lomo.jp-learner
投稿日時: 2011-7-16 20:25  更新日時: 2011-7-16 20:25
新米
登録日: 2010-1-23
居住地:
投稿数: 1
 Re: 石黒部長の粋な計らい
愛知大講座でお世話になっています近藤正也です。

いい人生経験をされてますね。言葉も生き物ですから、いろいろな社会経験は重要ですね。

この上司の責任というのはきわめて日本的で、日本人として働く以上自分にもしっくり来ます。

一方、自分が関係する外資系の物流会社(顧客指定の物流会社)は日本は支社でしかなくビジネスライクです。自分の仕事が明確で、システムで仕事をする。システムに合っていれば、納入が遅れようが関係なし(個人相手ではこうは行かないでしょうが)。
先週訪問したタイの某外資自動車メーカは世界共通(北米押し付けが実態)のルールが定着しておらず、こうしたらいいよと助言するも馬の耳に念仏。
現場の創造性をいかした現場力というのが日本では重視されますが、どうもそれとは縁の遠い世界でした。

この類の話はあまた経験しています。日本人のDNAとしてはなじみませんが・・・タイ産の赤ワインも購入してきたので、これもまたご一緒できればと思います。

ps。
あまりいい生徒ではなく申し訳ないです。講義はいつも新鮮な発見があり感謝しています。
ログイン
ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失

関連リンク

リンゴプロ翻訳サービス

リンゴプロ翻訳サービスは、中村が代表を務めている翻訳会社です。